フジール・スレイマン作「コギト」について

 

人間であるとはどういうことだろうか?この問題を探るため、劇作家フジール・スレイマンはデカルトの有名な宣言、「コギト・エルト・スム」—「我思う、故に我あり」を手がかりにします。ウィットと深い洞察にあふれた作品、『コギト』は、近未来を舞台に展開します。そこはテクノロジーがすべてを変えてしまった世界。ただひとつ、人間の精神の強さ—そして脆さ—を除いては。

 

『コギト』の舞台は現在から20年後のシンガポールです。主人公、キャサリン・リーの夫、トニー・セトーが殺されます。彼はバイオテクノロジーで巨万の富を築いていました。その時、もう一人の女性がキャサリンの前に現れます。「自分もキャサリン・リーであり、あなたと同じ記憶を持っている」と主張する女性が。二人のうちどちらが本物なのか?暴かれた過去によって、現在が浸食されていきます。そして、二人のアイデンティティまでもが。

 

2007年にシンガポール・アーツフェスティバルによるコミッション作品として制作され、高い評価を得た『コギト』は、神経科学やコンピュータ工学の成果を織り交ぜながら、愛と喪失の物語を紡いでいきます。